後藤さんとの出会いは、盛岡で開催された野外クラフトフェアでした。竹籠のブースに爽やかな印象の青年が立っており、籠職人に対する漠然としたイメージとは大きく異なっていたため、気になり、話を聴きました。
後藤さんの言葉からは、ものを作ることのみならず、作る自分、それを使う人たち、そして暮らしの風景など、それら全体を俯瞰的に捉えるような視点が感じられました。
ものを作る人が陥りやすい「ある狭さ」を冷静に判断し、開こうとしているように見受けられたのです。
後藤さんは竹細工の産地として知られる別府に居を構え、籠の制作をしています。
同時に、材料となる竹の切り出し、油抜き、天日乾燥など竹細工に必要な材料の確保についても積極的に取り組んでいるのです。現代の作家に必要なもの、そのひとつには、ものづくりだけではなく、持続可能な環境を共に作り上げていくという使命があるように思います。
籠はなんとも魅力的な道具です。用途によって様々なかたちの籠が欲しくなる。世に籠好きが多くいる理由もそこにあります。10cmでは、籠作家の個展は初となります。籠愛好家のひとりとして、多くの方にご覧いただけることを願います。
三谷 龍二